企画会議コラム

第7回企画会議「仙台フィルの2020年」

メリー クリスマス!
皆さん、穏やかなクリスマスをお過ごしですか?
仕事納めと重なって大わらわ・・・という方も少なくないと思いますが、そんな中で当コラムをお読みいただきありがとうございます。

皆様からのアイデアを元に無事プログラムが決まりました。
おさらいしておきましょう。

「つながる心 つながる力 みんなでつくる復興コンサート2021 supported by KDDI」

2021年3月7日(日)午後3時開演
名取市文化会館大ホール

指揮:岩村力
ゲスト:加藤登紀子
管弦楽:仙台フィルハーモニー管弦楽団

プログラム
  シベリウス:交響詩「フィンランディア」

  加藤登紀子さんと仙台フィルの共演曲(曲順は未定)
  愛の讃歌(エディット・ピアフ)
  時には昔の話を(加藤登紀子)
  今どこにいますか(加藤登紀子)
  わせねでや (桂島“うた”プロジェクトほか)

  ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調Op.67「運命」

チケットも18日(金)から一般発売が始まりました。お求めはお早めにお求めください。

 さて、今日は当コラム年内最後の更新ということで、特別なメッセージをご紹介しましょう。
 仙台フィル事業部の関野寛(せきのゆたか)さん、このコンサートのご担当でもある関野さんに2020年の仙台フィルの活動を振り返っていただきました。
今年は当コラムがスタートしたのも遅かったので、仙台フィルの今年、特にこのコロナ禍での活動についてまったくご紹介できていませんでしたので、お忙しい中で関野さんにご寄稿をお願いしました。
お読みください。

仙台フィルの2020年を振り返って

 仙台フィルハーモニー管弦楽団
 事業部 関野 寛
激動の、いや初めての経験となった、2020年が暮れようとしている。
大震災のあった2011年もまた、苦難の体験と、怒涛のような1年だったが、この2つの年に 共通するのは「(2020年)先が見えない/(2011年)先が見えなかった」ということ。
異なるのは「(2020年)人と人の生のふれあいが出来ない/(2011年)ふれあいによって先に進むことが出来た」ということだと、感じている。

仙台フィルの2020年は、2月下旬から感染症との対峙に具体的に翻弄され始めた。
2月23日の東北大学混声合唱団60周年記念コンサートで演奏会はストップ。
その後、2月29日の「みんなでつくる復興コンサート」がオーケストラ公演として初の中止。
さらに定期演奏会をはじめとして、実に7月中旬まで全ての公演が中止・延期となった。
中止公演にはオーケストラ公演のみならず、仙台フィルが震災後に毎年被災地で演奏を捧げてきた「追悼式」でのアンサンブルでの献奏も含まれる。2011年の震災直後に感じていた「寂寥感」とはまた少し違う、「無力感」に2020年前半は包まれていたように思う。復興に向かって厳しい現実にも向き合いながら、何か大きなものに突き動かされて復興コンサートを懸命に続けていたあの時とは異なる、演奏活動をすることが出来ず、することが許されない、辛さがあった。

風向きに変化が起きたのは7月。
公的な方針やガイドラインが整備される中で、7月12日・18日「山響×仙台フィル合同演奏会」を当初内容から曲目を変更して開催。同24日・25日には定期演奏会を出演者・曲目変更により念願の再開。
5か月ぶりの定期演奏会では、医療従事者の皆さんへの感謝を込めて、会場を「青」で彩るプロジェクト“Make it blue”に参加し、譜面台を青いカーネーションで飾り、思いを色で伝えた。
そして高関健 指揮の「新世界より」の熱演に、客席は総立ちのスタンディングオベーション。ブラボーを叫ぶことが出来ずとも、お手製の「ブラボー」ボードを掲げて“声援”を送ってくださる方々…。
ご来場いただいた皆様にとって、きっと待ちに待った音楽を聴くことのできた喜びの日であったと思う。
と同様に、楽団員・スタッフにとっても、久しぶりに音楽を通じて熱気ある会場とひとつになることのできた特別な日、目頭の熱くなる、新しいスタートの日となったのである。

8月には福島県白河市での親子コンサート(依頼公演の再開)。宮城県岩沼市でのマイタウン・コンサート。TBC「エンジョイ!クラシック」コンサート(無観客・生配信を初体験)。
9月には仙台市野草園でのオーケストラ野外コンサート。室内楽公演も再開。
10月には「せんくら」実施見送りのなかで「クラシックエール仙台」に出演。同月にはNHKのベートーヴェン生誕250周年プロジェクトとしてのオーケストラ公開収録に出演。また、文化庁「文化芸術による子供育成総合事業」として小中学校をオーケストラで訪問する公演も開始・・・と、堰を切ったように演奏活動の歯車が回転し始めている。

振り返るに、2011年からの「復興コンサート」では、私たち仙台フィルも被災者として、お聴きくださる被災者の皆さんに心を込めて音楽を届けて、私たちと来場者が音楽でつながり、時に「ふるさと」を共に奏でて歌い、音楽によって励まし合い、互いの背中を優しく前に押して、また支え合ってきた。
いまコロナ禍の中で、長らく演奏が叶わず、5か月も音楽を贈ることが出来ずに時間は徒に流れた。はて、音楽を届けることの意味は、何だったのだろう?
・・・あやうく、そう思いかけていたのである。
その疑念は、演奏会に来場された皆様の(必ずしも声に出さずとも)満ち足りて帰途につかれるその表情によって、次第に氷解していった。演奏会での音楽活動を通じて、心折れることなく私たちも忘れかけていたものを思い起こしてきた。
私たちも、音楽によって再び聴衆とつながり始めたのである。


11月3日、石巻市の遊楽館にて市民向け「宵のコンサート」に弦楽四重奏で出演。大震災で2つの大きなホールを失った現在の石巻市では、丘の上にある固定客席(408席)を持つ唯一のホールである。当日は会場を吹き抜けのロビーに移して間隔を取ってパイプ椅子がいっぱい並べられる。準備したパイプ椅子が満杯になるほどの来場となった。1曲1曲の演奏とトークに温かい拍手が湧き、笑顔がほころび、本当に皆さん「生演奏」を待っていたんだなあという感慨でこちらも一杯になる。
石巻市では、震災から10年を経る2021年春の開館に向けて、新しい音楽ホールの建設が目下進行している。大ホールを失った中、中規模ホールで、アリーナで、学校で、文化芸術の営みを途切れさせることなく工夫とご苦労をされてきた皆さんの思いが、ついに実を結ぼうとしている。
11月下旬、仙台市内の小学校を弦楽四重奏で足かけ2週間にわたって訪問(もともと、複数校の児童をホールに集めて開催する予定だったオーケストラ公演が感染症対策のため中止となり、逆に四重奏でこちらから学校訪問するコンパクトな形に切り替わったのだ。その訪問数は実に1日2校×8日=16校)。訪問先の先生方が仰る:「本当に、来てくださるだけで嬉しいんです」「行事が本当に何もなくなってしまって、卒業アルバムに載せる写真がないんです。演奏会の写真を撮らせてくれませんか…」。公演後にはたくさんの児童が感想文を送ってきてくれる:「感動した」「すごかった」「楽器をやってみたくなった…」。
小学校時代は誰しも一生に一度しかない。二度目は決してない。であるとすれば、(コロナ禍のために経験の希薄な子供たちが多く生まれるよりも)機会をいただけたのであれば全力で子供たちに責任を持って音楽を届けるべきではないか。写真の中にも、心の中にも、音楽の思い出を記憶してもらえたら幸せだ。相手が大人であれ子供であれ、本物の音楽で互いにつながるべきではないか。…そんな“当たり前”のことに、今あらためて気づかされている。

激動の、2020年が暮れようとしている。
冒頭に、「(2020年)人と人の生のふれあいが出来ない/(2011年)ふれあいによって先に進むことが出来た」という違いがあったと書いたが、いやいや、そうではなかった。
7月の演奏会再開後、「ふれあい」は生まれ続けている。手と手をつなぐ「接触」こそ出来ないものの、心と心をつなぐ「ふれあい」は、毎回の演奏活動の中で生まれている。なぜなら、音楽そのものが、人と人をつなぐものだから。
2021年3月には大震災から10年を迎える。この節目に、復興を願い続ける皆さんと音楽によってつながり、ベートーヴェンの交響曲「運命」によって苦難を乗り越え勝利に向かう物語をご一緒に感じたい。そして、10年に及ぶ皆さんのご支援・ご声援に、今度は仙台フィルより音楽で心からの感謝をおくりたい。そう思っている。

関野さん、お忙しい年末にご寄稿くださり、ありがとうございました。

いかがでしたか?
仙台フィルの演奏家の皆さんの演奏中の表情(笑顔)、それを食い入るように見つめながら音楽を楽しんでいるお客様、小学生たち・・・いろいろな風景が見えて来ました。
あと70日余りで、彼らにまた会うことができます。
彼らの奏でる温かい響きに浸ることができます。
あなたもご一緒しませんか?

次回の当コラムは1月1日元日の更新となります。
次回も素敵なゲストからの「年賀状」をご紹介する予定です。
それでは皆さん、よいクリスマス、穏やかな年末、そしてよいお年をお迎えください。

2021年3月7日(コンサート)まで、あと70日!

2020年12月25日(金)
「みんなでつくる復興コンサート2021」プロデューサー
OTTAVA 斎藤 茂

応募フォーム

みなさんの””を聞かせてください

このコンサートは、みなさんからアイディアを頂き、それを元につくっていくコンサートです。
下の募集フォームボタンよりフォーム開き、項目を選択、ご意見・ご要望をお寄せください。
何時でも、何回でもお送り頂いて大丈夫です。
いただいたアイディアは、コンサートプロデューサー斎藤茂による「企画会議コラム」で公開していきます。