企画会議コラム

斎藤茂 (OTTAVA)
斎藤茂 (OTTAVA) プロフィール

「第32回企画会議 3月5日土曜日、午後3時5分に」

 「minnadetsukuru.com(ミンナデツクル・ドット・コム)」を訪れてくださったTBSラジオ、TBC東北放送、そしてOTTAVAのリスナーの皆様、こんにちは。
「みんなでつくる復興コンサート2016」特設サイトにようこそ!

東日本大震災、東北被災地唯一のプロフェッショナル・オーケストラ、仙台フィルハーモニー管弦楽団にエールを送るコンサート、5回目の開催です。

タイトル:「つながる心、つながる力 みんなでつくる復興コンサート2016
                           supported by KDDI」
開催日:2016年3月5日(土)
会場:仙台市 東北大学百周年記念会館 川内萩ホール
出演:仙台フィルハーモニー管弦楽団
指揮:岩村 力
ゲスト・アーティスト:平原 綾香

4年に一度の2月29日を、どのようにお過ごしですか?
明日から3月だというのに、平年を下回る気温が続いていて、気が付いてみると背中を丸めて、うつむき加減で歩いている自分に気づきます。
今週も、寒い日がありそうですが、姿勢だけでも「春モード」で行きたいですね。

さぁ、いよいよ5日後、今週の土曜日に近づいてきました「みんなでつくる復興コンサート2016」当コラム(企画会議)も、今シーズンは今回が最終回です。

最後の議題は
「田園~ベートーヴェンと私の交響楽」

土曜日の演奏会で、ベートーヴェンの「田園」を初めてお聴きになるお客様が この交響曲を楽しんでもらえるように、各楽章の前に「曲紹介」をさせていただくことになったのですが、どんな紹介をすればよいでしょうか?台本を考えてください、というものです。
読み手は今回から司会に加わってくれることになったTBC東北放送の安東理紗アナウンサー
第1、第2、第3楽章の前に、彼女が読むスクリプトを考えていただいています。

前回までに5人の方の力作を紹介してきましたが、
さっそく、それでは6人目の方、Nahemaさんの『田園詩』

ベートーヴェン作曲、交響曲第6番ヘ長調「田園」

第1楽章『田園についた時の愉快な気持ちの目覚め』
 深呼吸して 緑の広がる風景を思い起こしてみてください
 幼い頃の思い出の中の山や川 旅行で訪れた田舎町
 日々の生活の中ですぐそばにある自然…
 目を閉じてその風景の中に入ってみましょう
 青い空の下で 心が浮き立ってくるようです。

第2楽章『小川のほとりの情景』
 少し奥の方へ足を踏み入れると
 遠くからではわからなかったものが感じられます。
 小川のせせらぎの音 木漏れ日のきらめき
 そよいでくる風の匂い 姿の見えない鳥の声…
 自然の神秘に囲まれて、穏やかな気持ちになってきます

第3楽章:人々の楽しい集い~
第4楽章:雷雨、嵐~
第5楽章:嵐の通り過ぎた後の感謝の心、牧歌
 人々が集まり 素朴な踊りを楽しんでいる様子が目に浮かびます
 しかし賑やかな宴も つかの間に 嵐がやってきます
 突然の黒い雲と激しい雷鳴…
 自然は優しいだけでなく
 時折 私たちに恐ろしい姿を見せることがあることを 思い出させます
 そして嵐が過ぎ去ったあとは 雨に洗われ
 すがすがしさを増した緑の風景が戻ってきます
 喜びと安らぎの中で感じるのは 自然は支配できるものでなく
 人間はその中の小さな一部であること
 これまでもこれからも 末長く共に生きていくものであること…
 目の前のこの風景を いつまでも眺めていたいという気持ちです

以上、Nahemaさん

Nahemaさん、ありがとうございます。
僕が「田園詩」というお願いをしているので、今までご紹介してきたのは、ポエム調なものだったのですが、実は、彼女が寄せてくれた「物語り調」のスクリプトも、音に出して読んだ時、自然に耳に入ってくる感じで、これはこれで、とても良いですね。使われているコトバのセンスが良いので、しなやかな印象が残ります。

続いては、グッと男性的、武蔵野ブルーベリーさんの『田園詩』

ベートーヴェン作曲、交響曲第6番ヘ長調「田園」

第1楽章『田園についた時の愉快な気持ちの目覚め』
 思い起こせばそこにある 心にしまい込んだ大切なもの
 呼びかければいつも答えてくれる
 それは我が田園風景
 今蘇る、我が心のふるさと

第2楽章『小川のほとりの情景』
 あたりを見渡せば懐かしい景色が広がる
 降り注ぐ光が水面に映え、そよぐ風は調べを運ぶ
 なぜか心が躍るのは、ここが私のふるさとだから

第3楽章:人々の楽しい集い~
第4楽章:雷雨、嵐~
第5楽章:嵐の通り過ぎた後の感謝の心、牧歌
 久々の再会
 友と語らう愉しきとき 人々の温かい笑顔
 何も変わらない日常の日々
 突然のこと
 鉛色の空が低く押し付ける
 たたきつける雨粒
 空は轟き、山は泣く
 人々は祈る
 仲間を守りたくて また美しい光を見たくて
 雨が止み、雲が去ってゆく
 乾いた風が畏れや不安を吹き飛ばした
 戻ってきた景色に人々はこうべを垂れた
 木の葉が顔を覆い思わず振り払った
 瞳を開けば光あふれる美しき田園風景
 そこにあるのは変わらない心のふるさとだった

以上、武蔵野ブルーベリーさん

ありがとうございます。
やわらかなNahemaさんの後に読むと、グッと雄々しい作品です。
ところどころに文語調の言い回しが使われていて、これがとても効果的ですが、 安東アナウンサーは、これをどういう風に読むのだろう?

続いては、さらに詩歌風、しかもこちらは表現主義(?)カギしっぽのKEYさんからの 『田園詩』

ベートーヴェン作曲、交響曲第6番ヘ長調「田園」

第1楽章『田園についた時の愉快な気持ちの目覚め』
 ざわざわざわ ピシッ・ぐぐっぐー
 さーー ・すーーーーっ さらさらさら・・・・
 暖かな日差しを受けて
 森が大きな深呼吸を始めています。

第2楽章『小川のほとりの情景』
 がさがさっ がさっ
 チッチッチッ・チュンチュンチュン ぽ・ちゃ~ん
 めぇ~~~・・・もぉ~~~ぅ
 キラキラと光る水辺。
 ほら、たくさんの命が集まっていますよ。

第3楽章:人々の楽しい集い~
第4楽章:雷雨、嵐~
第5楽章:嵐の通り過ぎた後の感謝の心、牧歌
 ほんと~
 わはは~
 え~? まじ~っ?!
 こんにちは~ あっお久しぶり~
 楽しい仲間との田園での集い。
 でも空の気分は気まぐれのようです。
 お友達はどうしたでしょう?

以上、カギしっぽのKEYさん

ありがとうございます。
オノマトペ(擬声語、擬態語)を徹底的に使った草野新平風「田園詩」。
最後の部分では、会話調に一変しましたが、どうせならば、とことんオノマトペで走っても良かったのではないでしょうか?ともあれユニークな作品、ありがとうございました。

最後は、ピッカリングさんから届いた「改定版」。
少しボリュームがありすぎたことと、第3楽章「人々の集い」の部分を加えてほしい、という僕のリクエストに応えてくれた『田園詩』

ベートーヴェン作曲、交響曲第6番ヘ長調「田園」

第1楽章『田園についた時の愉快な気持ちの目覚め』
 毎日、勉強!勉強!ってお母さん本当にうるさい
 でもテストが終わったら 仙台のおばあちゃんの所に行くんだ
 あそこにはオタマジャクシや さわがに、アスパラガスもある
 網と水槽とそれからマイ・マヨネーズも持っていかないとね
 風が波を打つ草原や林のざわざわする音って大好き
 あと森の色って緑だけじゃないんだよ
 空の青が反射したり影には赤が混じってる
 そしてキビタキの黄色が花のように見えるんだ
 早く風の音を聴きたいな

第2楽章『小川のほとりの情景』
 昔おじいちゃんが「川の好きな人は優しい人が多い」って言ってた
 「川は小さな声なんだよ だから良く耳を澄まさないとその声が聞こえない
 自分が話したり動き回ると せっかくの声が聞こえなくなってしまう
 だから川の好きな人は無口で静かな人が多いんだ」
 僕も小さな声を聞く事が出来るかな?

第3楽章:人々の楽しい集い~
第4楽章:雷雨、嵐~
第5楽章:嵐の通り過ぎた後の感謝の心、牧歌
 こんちきこんちきこんちきてん
 スズメ踊りは扇子が跳ねる
 祭りのやきそば食べたいな
 おなか一杯になって お昼寝して それから森に行った
 あたりが急に暗くなって雨が降ってきたので
 近くのバス停の小屋に入った
 しばらく風はやまなかった
 ヘトヘトになってベンチで横になった時にようやく風が止んだ
 僕は帰りたくて道沿いに歩いたらやがて覚えのある場所に出た
 安心して振り返ったら森の上に虹がかかっていた
 僕は森が生きていてこれからも
 いつもそばにいてくれるような気がした

以上、ピッカリングさん

ありがとうございます。文章がダイエットされ、しかも第3楽章「人々の楽しい集い」の要素に、仙台の風物詩、「スズメ踊り」を持ち込んだあたりは、さすがだなぁ、と感心しました。とても良い作品に仕上がりました。

さて、以上が「ベートーヴェンと私の田園詩」に応募くださった方の全作品(9編)3週にわたってご紹介させていただきました。
いただいた全ての作品は、実は週末に仙台フィルにお送りしました。
今回に関しては、音楽との相性、演奏との相性が何よりも大切ですから、やはり演奏家の皆さんに選んでいただくことにさせていただきました。

どなたの作品が選ばれるのか?
複数の方の詩を組み合わせるのか?
もしかしたら全員不採用、全く違う内容になるケースもあり得ます(その場合はごめんなさい)。
すべては5日後、3月5日の本番で明らかになります。
どうぞお楽しみに(コンサートにお越しいただけない方のためにも、来週OTTAVAのFacebookなどでご報告 させていただきますね)。

昨年の7月27日にスタートした当コラムも、今回をもちまして、今シーズンは終了です。
何とか32回、穴をあけることなくゴールに着くことが出来ましたが、それもすべて、毎回当コラムをお読みいただき、応募フォームにご投稿いただいた、たくさんの方々のサポートあってのこと。
本当にありがとうございました。

おかげさまで、今週の土曜日、皆さんから当コラム「企画会議」にいただいたアイディア(演奏曲目、ゲスト、マエストロなどなど)から「つくった」コンサートが、開催されます。

今年も同じお願いをして、このコラムを閉じたいと思います。

2016年3月5日 土曜日 「みんなでつくる復興コンサート2016」は、午後3時に開演します。
演奏会の冒頭は『献奏』、曲はバッハの「アリア」。
暗い舞台上で、岩村マエストロがゆっくりと手を振り下ろすと、仙台フィルハーモニー管弦楽団の弦楽セクションの方々が、静かに、厳粛に、でもしなやかに、バッハを奏でます。
5分間の演奏が終わっても、拍手はなく、会場にいるすべての人々、お客様と演奏家とスタッフが心をひとつに、東日本大震災の犠牲者18,457人のご冥福を祈り、1分間の黙祷を捧げます。


今度の土曜日、午後3時5分。
出来ましたら貴方も、一緒に祈ってください。
「みんなでつくる」とは、みんなで想いをひとつにすることなのだと、思っています。

コンサート開催まで、あと5日!

2016年2月29日
「みんなでつくる復興コンサート2016」プロデューサー
   OTTAVAゼネラルマネージャー
斎藤 茂

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